. 安全配慮義務:

労働者と使用者が労働契約を締結した場合、事業者は労働安全衛生法等により、労働者の安全及び健康を守るため安全(健康)配慮義務を負う。すなわち、労働者は労働を提供することにより、賃金を得て生活しており、この労働者が提供する労働の場所を用意するのは事業者である。ゆえに、事業者は、労働者が安全にまた快適に仕事が出来る事務所・作業場・施設・器具を用意し、仕事の管理等について労働者の生命や健康を危険から守るようにきちんと配慮する義務がある。事業者に安全配慮義務違反があれば、罰則が適用されるだけでなく、労働者本人又はその遺族等から高額の損害賠償金を請求される。過労死等では、億単位の賠償金の支払いを命ぜられた判決(電通事件の1審判決では1億2000万円の賠償額)もあり、企業のリスク管理上真剣に取り組まなければ企業存続に関わる問題である。労働者災害補償保険(労災保険)に加入するだけでなく、高額の賠償金請求に備えて民間の賠償責任保険に加入しておくのも一つのリスク管理対策となる。もちろん、普段より労働基準法、労働安全衛生法等の諸法令を厳守し、安全で快適な職場環境作り・健康に配慮した労務管理は欠かせない。例えば、事業者や管理者は、労働者が長時間労働(月間80時間を超える時間外労働)をしないように配慮したり、健康診断で異常が発見された労働者には特別の配慮をするようにしておかないと思わぬ賠償問題に発展する可能性がありますので注意すべきである。しかし、事業者の安全配慮義務が追求されたおり、予見が不可能の場合には免責される。

. 事業者が安全配慮義務違反を追及されないようにとるべき措置:

1.       労働者の危険防止措置: 機械等による危険防止措置、掘削等における作業方法から生ずる危険防止措置、墜落するおそれのある場所等に係る危険防止措置。

2.      労働者の健康障害防止措置: 原材料等による健康障害防止措置、建設物等に関する健康保持のための措置。

3.      安全衛生管理体制の確立: 総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、産業医、作業主任者の配置。

4.      機械等及び有害物に関する規制: 特定機械等に関する規制、有害物に関する規制。

5.      健康の保持増進のための措置: 作業環境測定の実施、一般健康診断・特殊健康相談等の実施。健康診断の結果労働者の健康が損なわれていることが判明した場合、就業場所や業務内容の変更、就業時間の短縮等の措置。

6.      快適な職場環境の形成のための措置: 事務所・作業所・トイレ・休憩所・食堂等を適切に設置。

7.      安全衛生計画の作成: 都道府県労働局長より指示があった場合、安全衛生改善計画を作成。